2025/10/07
見えないところで働く“思い込み”・“インナーボイス”に気づく
〜心の奥から聞こえる声を知ると、世界の見え方が変わる〜
*はじめに
「どうせ私にはできない」
「きっとあの人は私を嫌っている」
何気なく浮かぶこんな考えに、
気づかないうちに振り回されていることはありませんか。
私たちは毎日、数えきれないほどの判断をしながら生きています。
朝起きてから夜眠るまで、
一つひとつの選択を導いているのは
“自分の意思”だと思いがちですが、
実はその奥で、**見えないインナーボイス(内なる声・思考)**が
静かに私たちの行動を左右しています。
このインナーボイスは、
幼いころに受けた言葉や環境、
家族や社会から受け取った価値観によって
少しずつ形づくられます。
たとえば、
「頑張らなきゃ愛されない」
「失敗したらすべて終わり」
「人に迷惑をかけてはいけない」
こうした“思い込み”は、
私たちを守るために生まれたものかもしれません。
でもそのまま大人になっても働き続けると、
心をしばりつけ、
本当の自分らしさを隠してしまうことがあります。
今日は、私自身が体験した
“見えない声”との出会いと、
その声に気づき、やさしく向き合う方法を
ゆっくりお話ししていきます。
*エピソード:がんばり続けた私を止めた一言
数年前のこと。
私は大きな仕事を任され、
「結果を出さなければ」「周りをがっかりさせてはいけない」と
毎日必死に走り続けていました。
深夜までパソコンに向かい、
週末も資料を抱えて外出。
人に頼ることは恥ずかしい、
弱音を吐いたら終わりだ――
そんな気持ちで胸がいっぱいでした。
ある日、いつものように
夜遅くまで残業していた私に、
先輩がそっと声をかけてくれました。
「そんなに頑張らなくても、
あなたの価値はもう十分にあるよ」
その言葉を聞いた瞬間、
頭の奥で“カチッ”と何かが外れる音がした気がしました。
私は自分に問いかけました。
「なぜ、こんなに頑張らなきゃいけないと
思い込んでいたんだろう?」
そのとき初めて、
自分の奥に潜むインナーボイスに気づいたのです。
「頑張らなければ愛されない」
「結果を出さなければ意味がない」
『ダメな自分は、頑張らなきゃいけない」
その声は、
幼いころに“良い子”でいようと
一生懸命だった私が、
自分を守るために作り出した
無意識のルールでした。
気づいた瞬間、
胸の奥の硬い殻が少しずつひび割れていくようでした。
涙が出て止まらなかったのを、
今でもはっきり覚えています。
見えない声が私たちに与える影響
インナーボイスは、
一見すると私たちを守ってくれるものです。
「失敗しないように」
「嫌われないように」
こうした声は、危険を避けたり
社会で生きていく上で
必要な場面もあります。
けれど、長い年月の中で
その声が強くなりすぎると、
私たちの視野を狭め、
心の自由を奪ってしまいます。
本当は挑戦したいのに「どうせ無理」と諦めてしまう
人に頼りたいのに「迷惑になる」と一人で抱え込む
自分の意見を言いたいのに「嫌われるかも」と口を閉ざす
これらはすべて、
見えないインナーボイスに
静かに導かれた結果かもしれません。
*インナーボイスに気づくための小さなステップ
では、どうすれば
この“見えない声”に気づけるのでしょうか。
特別な才能や難しい訓練は必要ありません。
ゆっくりと自分を見つめる小さな習慣から始めてみましょう。
1. 一日の終わりに心を振り返る
寝る前に、今日の出来事を
「自分はどう感じたか」という視点で
数行だけ書いてみてください。
「上司の言葉に必要以上に傷ついた」
「友人に遠慮して本音を言えなかった」
そうした気づきを書き留めることで、
自分の心がどんな“声”に影響されていたかが
少しずつ見えてきます。
2. “なぜ?”をやさしく重ねる
何かに強く反応したとき、
「どうして私は今、こんなに不安なんだろう?」
「なぜ、この言葉にここまで腹が立つんだろう?」
と、やさしく問いかけてみましょう。
その答えの奥に、
「嫌われたくない」
「完璧でいたい」
というインナーボイスが隠れていることがあります。
3. 体のサインに耳を澄ます
心の声は体に表れることもあります。
肩や首のこり、
呼吸の浅さ、
胸の締めつけ。
「あ、いま体が緊張している」と気づくことが、
見えない声を知るきっかけになります。
4. 信頼できる人に話す
自分一人では見えにくい声も、
人に話すことで輪郭がはっきりします。
信頼できる友人、
カウンセラー、
家族。
「実はこんなふうに感じている」と
少しだけ打ち明けるだけでも、
心の奥の声が浮かび上がってきます。
5. 自分を否定せず、ただ“認める”
大切なのは、
その声を「悪いもの」と決めつけないこと。
「そうか、私の中に
“頑張らなきゃ”という声があるんだ」
と、ただ認めるだけで大丈夫です。
気づき、受け止めた瞬間から、
その声はゆっくりと静かになっていきます。
*よくあるQ&A
Q1. インナーボイスに気づくのが怖いです
A. その怖さも自然なこと。
見えない声は、あなたを守るために
長い間働いてきました。
ゆっくり、少しずつ向き合えば大丈夫です。
Q2. 気づいたあと、どうすればいいの?
A. まずは受け止めるだけで十分。
それを変えようと急がなくても、
“気づいた”という事実が
もう癒しの一歩です。
Q3. 書き出すのが苦手です
A. 一言だけでもかまいません。
「疲れた」「嫌だった」
それだけで心は少し軽くなります。
Q4. 自分の声と他人の声の区別がつきません
A. はじめは誰でもそう感じます。
「これは昔よく言われた言葉だ」
「これは自分が感じていることだ」
そうやって整理していくと、
だんだん違いが分かってきます。
Q5. どうしても否定したくなります
A. 無理に肯定する必要はありません。
「そう感じる自分がいる」
それだけを静かに見つめてみてください。
*最後に
見えないところで働くインナーボイスは、
あなたの弱さではなく、
あなたを守ってきた証です。
だからこそ、
その声を見つけてあげることは、
自分を責めることではなく、
自分にやさしく寄り添う行為なのです。
夜、静かな時間に深呼吸をして、
心の奥から聞こえるささやきを
ほんの少しだけ感じてみてください。
「こうしなければ」「こうあるべき」
その声の奥に、
あなたがずっと大切にしてきた
願いや想いが眠っています。
その願いに気づいたとき、
世界の色や音が少しずつ変わっていきます。
心はゆっくり、しなやかさを取り戻し、
本来のあなたらしい輝きを
もう一度感じさせてくれるはずです。
どうか今日から、
自分の心に静かに耳を澄ませる
小さな時間を持ってみてください。
その一歩が、
あなたのこれからを
もっと自由に、やさしく
照らしてくれるでしょう。