心理的な安心を育てる 安心して話せる雰囲気があると、人は自然と力を発揮できるもの

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心理的な安心を育てる
安心して話せる雰囲気があると、人は自然と力を発揮できるものです。

*はじめに

仕事の場で、人が本来の力を発揮できるかどうかを決めるのは、
スキルや経験よりも「安心感」かもしれません。

どんなに能力があっても、
「間違えたらどうしよう」「怒られるかもしれない」と感じながらでは、
心は萎縮してしまいます。

逆に、たとえ難しい課題に直面しても、
「話しても大丈夫」「助けを求めてもいい」と感じられる環境があれば、
人は自分の力を信じて行動できます。

この“心理的な安心”は、特別な人だけがつくり出せるものではありません。
小さな関わり方や日々の言葉の選び方から、誰でも少しずつ育てていけるものなのです。

*「心理的安全性」とは何か

心理的安全性(psychological safety)という言葉は、
ハーバード大学のエイミー・エドモンドソン教授によって提唱された概念です。

簡単に言えば、
「この職場では、どんな意見を言っても大丈夫」
「失敗しても、責められない」
「自分らしくいても、受け入れられる」
と感じられる状態のことです。

これは、単なる“優しさ”とは少し違います。
誰かを甘やかすことではなく、
安心の中で“率直な意見や挑戦”ができる雰囲気を指します。

安心がある職場では、
・意見が活発に出る
・失敗を共有して学び合える
・助け合いが自然に生まれる
という流れが起きます。

一方で、安心がない職場では、
・沈黙が多くなる
・「自分だけはミスしたくない」と防衛的になる
・本音よりも“正解っぽい言葉”ばかりが飛び交う
という空気になります。

「空気」は、誰か一人のせいで生まれるものではなく、
日々の関わり合いの積み重ねがつくるもの。
だからこそ、一人ひとりが少しずつ“安心を育てる側”に回ることが大切なのです。

*安心を育てる3つのステップ
① 「聴く姿勢」を整える

心理的安心の土台は、**“話を聴いてもらえる”**という実感です。

相手の話を途中で遮らず、評価せず、まずは「そう感じたんですね」と受けとめる。
それだけで、人の心は少しほどけていきます。

たとえば、部下が「自信がないんです」と話したとき、
「大丈夫!やればできるよ」と励ます前に、
「そう感じているんだね。どんなときにそう思ったの?」
と一呼吸おいて尋ねてみる。

安心は、「正しい答え」ではなく「安心して話せる空気」から生まれます。
聞く側の“静けさ”が、話す側の“勇気”を引き出します。

② 「間違えてもいい」を示す

人が挑戦するときに最も怖いのは、失敗そのものではなく、
「失敗した自分が否定されること」です。

もし上司が「この失敗から何を学べるかな?」と声をかけてくれたら、
その人はもう一度立ち上がることができます。

経営者やリーダーの中には、
「甘やかしてはいけない」と思う方もいます。
でも、安心は甘さではなく、“学びの余地”を広げる力です。

「完璧じゃなくていい」「分からないと言っていい」
そんな雰囲気のあるチームは、実はとても強いのです。
なぜなら、早い段階で問題を共有できるからです。

③ 「感謝の言葉」を惜しまない

人は、自分の存在を認められたときに、
安心して力を発揮できます。

「ありがとう」「助かったよ」「あなたがいてくれて良かった」
その一言が、どんな励ましよりも深く心に残ります。

忙しいと、結果や効率ばかりに意識が向きがちですが、
「今日も一緒に働けてうれしい」という気持ちは、
チームのエネルギー源です。

安心は“場の空気”でありながら、
実は一人ひとりの言葉と表情がつくっています。

安心が生まれるとき、人は変わる

安心して話せる場ができると、
人の中に眠っていた「考える力」「伝える力」「つながる力」が目を覚まします。

・今まで遠慮していた意見が出るようになる
・困ったときに助けを求められるようになる
・失敗を共有して次につなげる文化が育つ

この変化は、数字には見えにくいけれど、
組織の“体温”を上げていきます。

心理的安心が高い職場では、
「人がやめない」「人が育つ」「人が笑う」
そんな循環が生まれます。

安心は、行動の制限をゆるめるものではなく、
本来の力を発揮できる自由を広げるもの。
それが「心理的な安全」の本質です。

上司・経営者としてできること

安心を育てる立場にいる人にとって、大切なのは「完璧なリーダー」であることではありません。

むしろ、
「私も迷うことがある」「私も失敗から学んでいる」
と伝えるリーダーのほうが、人はついていきたくなるものです。

たとえば、会議で「これは私もまだ分からない」と言える勇気。
そのひとことが、チーム全体に「分からないと言っていい」許可を与えます。

また、部下が意見を言ったときに、
「それは違う」ではなく「なるほど、そういう見方もあるね」と応える。
この姿勢が、安心の文化を少しずつ育てます。

経営者や上司が「信頼の土台は恐れではなく安心から生まれる」と理解したとき、
組織の雰囲気は確実に変わっていきます。

*部下・従業員としてできること

安心は、上から与えられるものだけではありません。
自分から“安心を広げる人”になることもできます。

・相手の話を否定せずに聴く
・わからないことは素直に尋ねる
・人の意見に「そういう考え方もあるんですね」と返す

このような小さな行動の積み重ねが、職場の空気を少しずつやわらげていきます。

また、自分が安心を感じる瞬間を意識してみましょう。
誰かにやさしく声をかけてもらったとき、
笑顔で「ありがとう」と言われたとき、
自分の意見を受けとめてもらえたとき。

その体験を思い出すことが、他の人へのやさしい対応につながります。

*安心を育てる言葉の習慣

心理的な安心を支えるのは、日々の“言葉の選び方”です。

たとえば、
「なんでできなかったの?」よりも
「どこで難しさを感じた?」と聞く。

「ちゃんとやってね」よりも
「困ったことがあったら一緒に考えよう」と伝える。

このような言葉の違いは小さいようでいて、
受けとる側の心には大きな差を生みます。

安心を育てる言葉には共通点があります。
それは、 “相手を信じる前提”で話していること。

信頼されていると感じた瞬間、人は自分の力を信じられるようになります。

*おわりに 〜安心は、やさしい勇気から〜

心理的な安心は、「問題をなくすこと」ではなく、
「問題を話し合える関係をつくること」です。

職場で人が安心していられるということは、
自分の存在を大切にしてもらえているということ。
そして同時に、相手の存在も大切にしているということです。

安心を育てるのに必要なのは、特別なスキルではありません。
目の前の人を思いやる気持ち、
自分の言葉に責任を持つ姿勢、
そして、間違いながらでも対話を続けようとする“やさしい勇気”。

その小さな積み重ねが、
やがて「この職場はあたたかいね」と言われる場所をつくります。

今日もどうか、自分にもまわりの人にも、
「安心していいよ」と伝えられる一日でありますように。

🌿 Amazing Grace 内田梓
心がほどけるカウンセリングと、人が育つコミュニケーションを。